『心はあなたのもとに』 [村上龍]
心はあなたのもとに
I'll always be with you, always.
村上龍はエッセイ・評論ばかり読んでいて、彼の小説は数冊しか読んでいなかった。おそらく100年単位で生き残る作家の筈だから、少し読んでみようかと読み始めた。恋愛小説だけど重いし切ないものだった。それでも、最近、大切な人が亡くなり始めて処理しきれない物もあったけれど、対処法というか、考えを持つことが出来たように思う。
作品の中でも言うように、その死によって生まれた心の中の空洞は、その人を自分の中に埋め込んでいくための時間だと言うこと。だから、ずっと考えていて良いのだと、誰かも言っていた。後藤君が死んでおよそ1ヶ月、文章に起こして断片的にまとめてみると、かなり影響を受けていたことを知り始めた。面白い、そう思うのだ。
『心はあなたのもとに』 村上龍/文藝春秋 (2011年3月25日 第1刷発行)
p228
欧米の富裕層の男は基本的に家庭を大切にする。宗教的な理由もあるが、個人主義の社会なので、歳をとってからの孤独がいかに恐ろしいかを知っているのだ。また莫大な慰謝料と離婚でのエネルギーの損失を考えると、家族とともに良い時間を共有するために物理的な時間と金を投資するのは合理的だと思っている。
p250
どうして男は、この女は自分といっしょにいるほうが幸福になれるはずだと思いたがるのだろう。その女が幸福かどうか、その女以外、誰にもわからない。
p437
信頼は疑いと警戒の延長線上に、長い交渉の末に築かれるという基本を忘れてはならない。
村上龍の最近の文体だろうが、小説なのに評論のようになっていて、彼の猛勉強ぶりがうかがえる。東野圭吾と錯覚するほど上手な運びだけれど、龍さんの方が冷徹で、強引かな。両者とも世に訴えたいことがあり、龍さんはまるで評論のように分析と解説も入れてしまう。東野圭吾さんには少し遠慮があり、きっと勉強不足。
雨が続き、寒冷前線が近所に停滞しているのだろうか、寒く感じる。私が長袖を欲し、半ズボンだとクシャミばかりが出るのである。キュウリとミニトマトの発育に遅れが出るのではと危惧する。連日の小雨続きで、雑草が、ぐいぐい伸びてきている。私の仕事が生まれたと言うことだな。
ファイト!
2016-06-05 06:49
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コメント(7)
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おはようございます。
村上龍の作品は「限りなく透明に近いブルー」でしたっけ(?)
これだけは読みました。
今はほとんど技術本に時間がとられています。
by aru (2016-06-05 07:05)
私の中の村上龍は・・・・・
ハードな小説から始まって・・・どっぷりハマった数年。
TVの中で、彼の姿を見て・・・
また印象が変わったりして・・・
エッセイ、読みたい。
今日は関空で食べ歩きしたいと思ってます。
雨、止んだと思ったら、また降って来た。
そして・・・・寒い。^^;
by hatumi30331 (2016-06-05 07:24)
最近は実用書を倍速で読んでばかりでゆっくり小説を味わっていなかったです。やることが多すぎる‥^^;
by momo (2016-06-05 08:07)
“信頼は疑いと警戒の延長線上に、長い交渉の末に築かれるという基本を忘れてはならない”
正にその通りやと思いました。
by タンタン (2016-06-05 08:56)
村上 龍さんと東野 圭吾さんはまったく資質の異なる作家です。
文化や経済そして国際紛争、世界情勢まで広範囲にわたって事実を深く調べ人間性を鋭く突いて作品に昇華するのが村上 龍さん。
稀代のストーリーテラーとしてミステリーとエンタテイメントの衣を着せ、ときには過剰なほどに読者の情緒を刺激するのが東野 圭吾さんだと勝手に思っています。
小説ですから情緒を刺激してくれる点では同じなのですが、東野さんは上澄みをすくい上げたような日本人らしいやさしい情緒で、村上さんは突き放したような乾いた情緒といったところでしょうか。
村上さんの作品に散りばめられたアフォリズムは読んでいて刺激的で面白いですよ。
そのうちに傑作をものにするかもしれないと、密かな期待です。
人間というイキモノに対する思いもそれぞれ違っているのでしょう。
と、僕流の彼らへの感想です。
週末に家にいて、週明けに職場近くの公園や出かけたついでに立ち寄る他の公園でも、たった数日のあいだに花の状態や雑草の伸び具合がまったく異なってしまう今の季節です。
草木が眠るのが丑三つ時なら、草木が育つのがこれからの時期でしょう。
うっかり目を離したスキに「私の仕事」の素がどんどん増えていきますよ。
「私の仕事」メンドウでもこまめに対処するのが一番ラクチンな方法かもしれません。
今日もファイト!です。
by あるいる (2016-06-05 10:05)
こんにちは^^
難しく考える本は最近苦手です。若いころは貪欲に読んでいましたけれどね^^
今は軽~~~い本ばかり。
by mimimomo (2016-06-05 11:07)
大々的に宣伝していただいた手前かなり言い出しにくかったのですが、
実は鹿部の恩師、一昨年に大阪へ戻ってこられました。やはり寒さが
年々身に凍みるようになったのでしょうか、直接本人に確認するタイミン
グを見計らっている状態です。
小説から暫く遠ざかっておりますのでもうそろそろ再開してみようかと
常々先生の小説記事を読みながらそう考えておったところでした。
猛暑だと予想が出てる今夏ですが、このところの乾燥状態と過ごしやす
さがどことなく不気味でなりません。
by Lonesome社っ長ょぉ〜 (2016-06-05 21:57)