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『道頓堀川』   [読書 本]




朝5時では、妻が寝ているからテレビはつけないのだが、なんだか疲れていて、テレビをつけてボンヤリしていたら、大きな地震があったと言う話。 全く知らないで爆睡していたのだけど、震度7 は大きくて、心配になった。震源地の熊本への思いもあるが、鹿児島の方はどうだったか、三女の心配をした。親心なんだろうな。






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宮本輝という作家が居ることは知っていた。私がまだ、年長さんの学生稼業と甘ったれていた時代に、映画友だちと見に行った『泥の河』(1981年)に、溜め息を漏らしたことがある。登場する3人の子どもの演技、演技指導、演出が秀逸で、自分と同時代の光景でもあり、非常に良い映画だった。その作品の原作者は、宮本輝だった。 ただ、映画が良すぎて、原作へ回帰することはなかった。





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宮本輝の講演会CD『小説が生まれる時』を図書館で借りて、何度も聴いていた。親しみやすい大阪弁で、聴衆を笑わせる気配りのある語りだった。結核時代の話も、苦労話ではなく笑い飛ばす、「しなやか」な強さがある。聴いていて爽やかで、通勤特急のお供だった。好きになった。

    宮本輝
      1947年 兵庫県生まれ
      1970年 追手門学院大学文学部卒業
      1977年 『泥の河』/太宰治賞
      1978年 『螢川』/芥川龍之介賞
      1986年 『優駿』/吉川英治文学賞

ウィキペディアで、こんなエピソードを読むと、そう来たかと思ってしまう。
 雨宿りに立ち寄った書店で某有名作家の短編小説を読んだところ、書かれていた日本語が「目を白黒させるほど」あまりにひどく、とても最後までは読み通せなかった。かつて文学作品を大量に読んだことがある自分ならば、もっと面白いものが書けると思い、退社を決め、小説を書き始める。






『道頓堀川』 宮本輝/筑摩書房 (1981年5月25日 第一冊発行)
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カネなし、コネなし、単位なし。極貧学生の邦彦が生活の糧を求めて、道頓堀川に面した、戎橋近くの喫茶店「リバー」に住み込み、彼の目を通してその界隈の、わけありな人と人情が交錯していく。この作品は作者が「あとがき」で書いているように、短編作品として世に問うた後、大幅に加筆訂正、書き加えをしており、作品の「一貫性」としては微妙にズレを感じたのだった。

ズレは視点で感じだのだが、W主人公と捉えれば、各章ごとに主人公を入れ替える体裁を整えたのかなと思った。主人公である邦彦に、優しい目を向ける店主の武内がもう一人の主人公であり、その、彼らを内包する道頓堀川こそが、本物の主人公だと改編したのではないか。

しみじみと、しんみりと、読み終えた。宮本輝が好きになった。さっそくもう1冊と『星々の悲しみ』を図書館に発注した。村上龍の予約待ちがあと2人まで迫ってきているので、先に来て欲しい。

私がミナミでバイトしていた頃より、数年前の時代設定だと思うが、現在にはない人情味を思い出し、感じることが出来る。なんとなく自分の、駆け出しの青春時代を思い出してしまった。ギラギラとはしていないのだけど、危険な季節を、羅針盤も持たずに生きていこうとしていた、あの頃。・・・少し思い出して懐かしく感じている。

「邦ちゃんも、いっぺん幸橋の上から道頓堀を眺めたらええ。昼間はあかんでェ、夜や、それもいちばん賑やかな、盛りの時間や」



水商売が好きなキリギリス君には危険な香りが、いっぱい。 周囲の者たちと、坂道を互いに転げていくのだから、遅いのか速いのか、堕ちているのかさえも分からない「キリギリス君」を思い出し、それでも愛おしいのはなぜだろうかと、『道頓堀川』を読んで考えている。



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コメント 7

hatumi30331

道頓堀川も・・・・・・
風情が無くなったね。^^;


地震・・・・恐い!
うちの息子から電話。
福岡もかなり揺れたみたい。
鹿児島も心配やね。
親心・・・あたりまえです。
by hatumi30331 (2016-04-15 07:20) 

ニッキー

お嬢様、被害ありませんように<(_ _)>
by ニッキー (2016-04-15 08:45) 

JUNKO

お嬢さんのところまでは大丈夫ですよね。親心は当然です。本当にいつ何が起きるかわからないですね。昨夜からそのニュースを見ていました。今回は政府の対応早かったです。まだ余震が続いているようでこれ以上の被害が出ないことを願っています。
by JUNKO (2016-04-15 11:28) 

あるいる

「道頓堀川」は原作を読んだこともなく映画を観たこともないのに、なぜだか和服姿の松坂慶子さんの「おしりが四角ぅなったら女もおしまいや」と言うセリフが浮かんできます。
映画ポスターに書いてあったのか、なぜにこんなセリフが浮かんできたのかが不思議です。
映画版「泥の河」は名作で、全編に散りばめられたこどもの純な残酷さといじらしさが痛いほどでした。
映画が素晴らしいから原作は読まないままです。
宮本輝さんは「錦繍」が一番最初に読んだ作品で、歳をとったらもう一度読みなおそう脳内作品リストに入れたまま、未だに再読はしていません。
もう、そろそろ読みなおしてもいいお年頃かもしれません。

by あるいる (2016-04-15 15:49) 

ナツパパ

お嬢さん、心配ですね。
ご無事と思いますが、それでも親としては心配ですよね。
by ナツパパ (2016-04-15 16:21) 

beny

加賀マリコ様なら誰だって。

by beny (2016-04-15 19:55) 

Lonesome社っ長ょぉ〜

熊本の小一時間前、一瞬でしたが横浜も縦揺れのみの地震があって
なんだか気持ちが悪いなと思ってたところに、速報が飛び込んで来たの
でした。関連性がなくとも日本列島の地下で何かが起ころうとしているの
だと確信しました。
幸橋といえば地下鉄千日前線桜川駅からチョッと行ったところの道頓堀
川に架かっている橋ですかね。目的の場所は違いますが明日は早朝
から一泊で大阪です。
by Lonesome社っ長ょぉ〜 (2016-04-15 22:22) 

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