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『 翔ぶが如く (一) 』   [司馬遼太郎]




こんどは西郷どんが主人公になるのだけど、維新後の落ち着かない新政府の時期で、思想の時代から行動の時代を通り、いよいよ調整の時期に入ったわけだが、やはりきな臭い。幕末動乱期に「パシリ」だった連中が、それなりの顔になっていくのも面白い。大隈重信が顔を見せ始めるから、長女は少し嬉しいかも知れない。ただ、扱われ方の軽さに、一部憤慨はするだろうが。




『 翔ぶが如く (一) 』 司馬遼太郎/文春文庫(2002年2月10日発行)
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p103
 ところが薩摩の士族習慣のおかしさは、あいさつ口上でさえ多弁を恥じることであった。万事、言葉を信ぜず、心を信ずるという風があり、「見ればわかる。言うも聴くも必要なか。」と言い、態度で意思疎通がおこなわれた。川路は心から恐縮を表わしつつ、しこしずつ後じさりした。


p217
 山県は長州の足軽だった男で、奇兵隊に入り藩内の動乱のなかにあって着実に地歩を築き、明治後いきなり陸軍中将になった。旧藩時代は藩内の革命陣営に属していたくせに石橋をたたいて渡るような用心ぶかいたちで、たとえば故高杉晋作のような天馬空をゆくような男を兄貴株に頂いていながら、高杉の高等数学的発想にひきずられることなく、いつもそのそばで足し算の算盤しかやらず、つねに高杉に対して堅実なブレーキの役目をはたした。
 維新後、同藩の大村益次郎が兵部大輔(ひょうぶだゆう)になって山県はその下風に立ったが、大村が暗殺されるにおよんで陸軍の長州閥は山県がにぎった。


p300
 西郷がこうもいっていた。
 「自分を愛することが、善からぬことの第一である」
 とか、あるいは後世に親炙されされたところの「命も要らず、名も要らず、官位も金も要らぬ人は始末にこまるものである。しかしこの始末にこまる人ならでは艱難を共にして国家の大業は成しえられぬものだ」ということも川路は西郷自身の言葉で聴いていたし、西郷そのひとがまったくその言葉どおりの人であるということも、多年西郷に接してきてよくわかっている。


p346
 (神仏というものは人の善悪を見そなわさぬものなのか。悪がこうも栄えてよいものか。)
 と、藩士のどの家庭でもささやかれた。それがわずか二十三年前のことである。沢子の家では父が郷士であるため藩の行政に無縁だった。このためこの抗争の局外にいたが、父はこの悲報をきいたとき、声をあげて泣いた。彼女はまだ幼女だったが、父が見せた男泣きという異様な光景を、成人後もわすれることができない。沢子は事情のわからぬまま、正義を守るということがいかにおそろしいものであるかを知った。






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ある日の昼下がりのことである。
ときおりだが、次女が手の込んだ昼ご飯を作るので、楽しみである。
しかし何よりもの楽しみは、次女が新しい生活に血を通わせ始めていること。
5年間の鹿児島生活に終止符を打って、ある種の一大決心で帰ってきた。

一昨日の日曜に、ローカルな大会があり、次女の決勝2種目の応援に行った。
楽しそうに泳いでいたのが良かった。
200m自由形と100m自由形決勝の間隔が20分しかなかったけれど、よく泳いでいた。
予定していたジャパン・オープンの標準タイムを切ることが出来た。
少しずつ調子を取り戻している。そんな実感が見ていて分かる。決断に胸を張ろう。ファイト!



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コメント 8

hatumi30331

次女さん、お料理上手やね。^^
新しい生活へ・・・
決断の春やったんやね。
これは応援しなきゃ!!
by hatumi30331 (2015-04-21 06:09) 

isoshijimi

本当にお料理が上手でいらっしゃいますね。
決断と新しい一歩、父娘で新しい春を迎えられていらっしゃいますね。
気持ちのいい一歩でありますように。

ご丁寧なコメントをありがとうございました。
やはり、嬉しかったです。
一個ずつクリとの思い出を思い出せている感じです。
ごまにもありがとうございました。髪型も新しいことにチャレンジ、春ですものね。
by isoshijimi (2015-04-21 07:27) 

soujirou-3

その昔、会社の飲み会で西郷さんについて語ったことがあります。後日飲み会参加の女性からうちの父も西郷さん大好き人間です。鹿児島のどこの出身ですか?と聞かれたことがありました。ボクの苗字が鹿児島にも比較的多くある苗字とのことでした。
by soujirou-3 (2015-04-21 10:15) 

あるいる

楽しそうに泳がれていたとはなによりです。
新しい生活に血を通わせていられるとは、これもまたなによりです。
これからどんな展開になって行くのか、楽しみが増えたようです。
これもまたなによりです。
大阪へ戻って来たときに旧友に言われました。
あいかわらず自分を好きになっていないようだな、と。
過剰な自己愛はよろしくありませんが、適度に自分を認めてやることは必要だと、やっと気づいたときでした。
自分を愛し、家族を愛し、友人を愛し、人生を愛することはとても大事なことだと思えます。
それでこそ、前へ進めるというものですよ。
みなさんにファイト!です。

by あるいる (2015-04-21 12:12) 

ミケシマ

読書は好きなのですが、どうしても入り込めないのが歴史小説…
夫は日本史が好きでほとんど時代小説しか読みません。
わたしは学生時代から日本史が苦手で(^^; 不思議です。

大切な人が輝いているところを見るのは嬉しい瞬間ですね。
お写真の料理がとっても美味しそう。
美味しい料理をつくれるのは心が充実している証拠ですね!
by ミケシマ (2015-04-21 12:58) 

足立sunny

次女さん、調子は上がってこられたようですね。
札幌へ戻っての新生活、頑張っておられますね。
by 足立sunny (2015-04-21 20:38) 

JUNKO

お料理上手の次女さんのお料理を美味しそうに食べるtommyさんの姿が目に浮かびます。
by JUNKO (2015-04-21 22:10) 

あゆさこ

↑ わたしも、娘さんが作ってくれる料理を美味しそうに食べているtommyさんの姿を思い浮かべました。(*^_^*)
次女さん、新しい生活を送り始めたのですね。
人生には、無駄はないと言われています。山あり谷あり、だから、生きているという実感が持てるというものです。(^_-)-☆
tommyさんの娘さんですもの、ましてや(笑)、奥様の娘さんですもの、大丈夫ですよ~。(^.^)
それに、精神も強く鍛えられてますもの。ファイト!

by あゆさこ (2015-04-22 04:33) 

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