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『文明の衝突と21世紀の日本』   [読書 本]




 ・北アフリカ・チュニジアの首都チュニスで、外国人観光客らを無差別に銃撃したテロ発生。
 ・落語家の人間国宝・桂米朝さん死去。
 ・サッカーのイタリア1部リーグ、パルマが19日、破産宣告を受けた。



『文明の衝突と21世紀の日本』
                 サミュエル・ハンチントン/集英社新書(2000年1月23日発行)
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p30
 現在のイスラム教徒が暴力に頼りがちな原因の一つは、オスマン帝国の没落以来、イスラムにはリーダーシップを行使して、秩序を維持し、規律を正すような中核国家が存在しないことにある。


p48
 しかし、日本には革命がなかった。日本の近代化は、上から課された二つの主要な改革の時代―明治維新と米軍による占領―のなかで進められたのである。社会を引き裂くような苦しみと、流血を伴う革命がなかったことで、日本は伝統的な文化の統一性を維持しながら、高度に近代的な社会を築いたのである。

        日本の近代化に関する特徴的な点として、「日本の近代化が革命的な激動を
       経験せずに成し遂げられた」とする点には疑問を感じるのだ。
       ・身分制度の崩壊は大きい
       ・幕末のクーデターも大きい


p70
 さまざまな問題について、アメリカは孤立化を強めており、一つか二つ、あるいは三つの国と、協力できるだけで、その他の大半の国を敵対勢力にまわすという状況である。自国の利益がアメリカの利益と一致すると考える国は、減少しつつある


p81
 アメリカが提供できる利益を考えた場合、他の国々のとりうる分別ある態度とは、国際関係の特殊用語で言えば、アメリカのパワーと「バランス」を保とうとすることではなく、アメリカに「便乗する」ことだろう。しかし、アメリカのパワーが低下して行くにつれて、アメリカに協力することで得られる利益も減り、同じようにアメリカに対抗するために必要なコストも減るだろう。そのため、将来において反覇権連合が出現する可能性が大きくなる。


p94
 人々は祖先や宗教、言語、歴史、価値観、習慣、制度などに関連して自分たちを定義づける。たとえば、部族や人種グループ、宗教的な共同社会、国家、そして最も広いレベルでは文明というように、文化的なグループと一体化するのだ。人々は自分の利益を増すためだけでなく、自らのアイデンティティを決定するためにも政治を利用する。人は自分が誰と異なっているかを知って初めて、自分が何者であるかを知るのである。


p98
 チェコの大統領ヴァーツラフ・ハヴエルは「文化と文化の対立が増加している」と述懐して、「今日それは歴史上かつてないほどの危険性を帯びている」と言った。また、フランスの政治家で元EC委員長のジャック・ドロールも「未来の紛争は経済やイデオロギーではなく、文化的な要因によって誘発されるだろう」と認めている。そして、最も危険な文化の衝突は、文明と文明の断層線にそって起こる。


p154
 1994年に、リー・クワン・ユーが述べている。「世界に占める中国の領土は巨大なもので、30年から40年ののちには新しい力のバランスを考え出さなければならない。それは単に巨大な勢力というだけにとどまらない。人類史上、最大の勢力なのだ。」 中国の経済発展が、あと10年続いたら(可能に思える)、そして後継者選びのときにもその団結力を維持できれば(できそうに思える)、東アジア諸国はもちろん世界中が、人類の歴史で最大の勢力が、ますます独断的な役割を演じるのを受け入れざるをえないだろう。


p162
 この戦争(アフガン戦争)がイスラム世界に与えた影響は、1905年に日本がロシアに勝った時に東洋世界に与えた衝撃にも劣らぬものだった。西欧は自由世界の勝利と思ったのだが、イスラム教徒はイスラムの勝利だと考えたのである。
 たしかにソ連に勝つためにはアメリカのドルとミサイルは不可欠だった。だが、もう一つ欠かせなかったのは、イスラムが力を合わせて戦うことだった。さまざまな政府や集団が、率先してソ連と戦い、自分たちの利益にそった勝利を勝ち取ろうと努力した。


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一昨日、焼き鳥屋で飲んだ卒業生Aくんは、アイルランド留学中に「差別」を経験した話をしてくれた。最もひどかったのは、玉子を投げつけられたことだったらしいが、それは彼を留学生と知らず、「外国人労働者」と思ったかららしい。投げつけられた玉子と共に罵声を浴びるわけだが、貧しい層が、外国人に仕事を奪われた時、そうやって爆発するという現象を、日本にずっと暮らしていれば経験できないことだったろう。

どうする。どうやる。どうなれば落ち着くのか。無条件の平和は幻想だ、と言っても通じない日本よ。
定年退職まで後10日、すでに新体制の準備が始まった職場で、白旗を揚げている、オレ。
ファイトだぜ!



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コメント 6

isoshijimi

アイルランドでの差別・・・最もひどいということは他にも色々あったことでしょう。
そして、きっとより成長されてきたのでしょうね。
by isoshijimi (2015-03-20 06:41) 

hatumi30331

世界を見て、日本を見て、我が街を見て・・・・
自分を見る。
そして今、自分に何が出来るか・・・・・
後10日。
ファイト!
by hatumi30331 (2015-03-20 06:58) 

あるいる

「文明の衝突」はまだ100頁ほど進んだ第二部・イスラムの復興のところまでしか読めていません。
疲れているときに読むと、いい催眠導入剤になってくれている今日この頃ですよ。
読み終えて、「文明の衝突と21世紀の日本」や他の関連本にはいつになったら進めるのやら。
情けない日々です。
世界には差別があるものだと身をもって体験して来られたAくん、いい経験になってくれたらいいですね。
日本にも昔からヨツだとかエタだとか呼ばれた部落差別がまだまだ根強く残っていますし、民族差別や人種差別も障害者や弱者への差別もあります。
我が身を振り返って、僕に密かな優越感を感じさせてくれるものたちに誰にも言えない差別を感じてしまうことが現実としてあります。
理想論やきれいごとではすまされない、この優越感という厄介なシロモノが人の心からなくなることはあるのでしょうか。

by あるいる (2015-03-20 15:52) 

cafelamama

あるいるさんのところのコメントを拝見しました。
tommyさん、東京移住を考えていらっしゃるのでしょうか。
だとしたら、それはそれで興味深い話です。
by cafelamama (2015-03-20 16:58) 

Lonesome社っ長ょぉ〜

EU先進諸国は間違いなく実利を取っていきます。だから、アメリカよりも
中国なのでしょう。いつまでの第二次大戦の恩義は感じてられないのが
本音。メルケルさんも嫌味を言いにわざわざやって来た様なもの、大学
時代、ヘブンリーのスキー場リフトで隣り合わせになったドイツ人になぜ
だかまた一緒に戦おうと言われ、それからドイツという国に興味を持ち
始めました。最初に訪れた欧州の国がドイツだったのは言うまでもない
だけに残念でした。留学中及び欧州先進国旅行中の人種差別は経験
豊富です。
by Lonesome社っ長ょぉ〜 (2015-03-20 22:48) 

jiji_san

 良著ですよね.
日本文明と言う分け方に興味を抱いて著者の本を手にした事を思い出しました.
by jiji_san (2015-03-21 01:49) 

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