SSブログ

世に棲む日日 (一)~(四)   [司馬遼太郎]


巴里遠征での課題図書を決めて、Amazonで注文した。配送先を妻の実家にした。
市川の妻の実家裏からの配送だけど、正月だからか出発の前日に到着だった。
どうでも良いことだけど。



世に棲む日日 / 司馬遼太郎 (文春文庫)



世に棲む日日 (一)
DSC01144.JPG

NHK大河ドラマで『花燃ゆ』というものが始まると聞いた。
「燃ゆ」という表現が好きで、来年からの高校生が少し楽になる。
「燃ゆ」は古語で、ヤ行下二段活用の動詞。しかしこれを理解させるのに苦労する。
特に、連用形の「燃え」に下線を引き、活用の行と種類を問えば、ア行などと言い出す始末。

『マッサン』ではないが、NHKが垂れ流してくれることで、身近な物になってくれる。
「燃ゆ」が身近になっていてくれば、高校1年での古典文法がやりやすい。
さて、ミーハーだが、否、久々に司馬遼太郎世界を垣間見ることにした、選定だった。


p95
人間の運命を決めるものは、往々にしてその能力であるよりも性格によるものらしいが、藩の運命も、その性格によってつくられていくものらしい。




世に棲む日日 (二)
DSC01910.JPG

p107
(高杉晋作 辞世の句、上の句だけしか作れなかった・・・息も絶え絶え)
「おもしろき こともなき世を おもしろく」
が、女流歌人の野村望東尼(もとに)は晋作の寿命がすでに尽きようとしているのを見、いまいそぎ下の句をつけてやらないとせっかくの辞世の句が尻切れとんぼになることをおそれ、
「すみなすものは 心なりけり」
と、つけた。

p243
松陰は晩年、「思想を維持する精神は、狂気でなければならない」と、ついに思想の本質を悟るにいたった。思想という虚構は、正気のままでは単なる幻想であり、大うそにしかすぎないが、それを狂気によって維持するとき、はじめて世をうごかす実体になりうるということを、松陰は知ったらしい。

p286
 古来、日本人が外国文明をその目で見た時、たれひとり平静でありえたことがなかった。自己嫌悪か、さもなくば狂おしいばかりの自己肯定か、さらには相手文明に対する礼讃か、恐怖。そういう極端な心理を経ずに接することができなかった。
 晋作のばあいの条件は、いまひとつ極端である。二百数十年来の鎖国国家を出て、かれは上海という西洋の出店へゆくのである。しかもかれは、長州藩における攘夷志士の巨魁であった。


第二巻の途中までは、150年前の経済論、政治論であろうか。日本史概説「幕末編」めいたもので、娘たちにも読ませようと思った。この国の変革期に何が起きたかという、一つの視点を手に入れさせるという意味で。




世に棲む日日 (三)
DSC02003.JPG

p114
  時世得顔(ときよ えがお)
p136
  発狂踏舞




世に棲む日日 (四)
DSC02347.JPG

p147
「人間というのは、艱難は共にできる。しかし富貴は共有できない」 (晋作)

p148
「艱難ヲトモニスベク 富貴ヲトモニスベカラズ」





DSC06110.JPG

世に棲む日日

おもしろき こともなき世を おもしろく



あっけなく終わってしまった。
高杉晋作が、そうであったように、作品も、そうして終わった。
第一巻で筆者が言う、主人公を吉田松陰とも高杉晋作とも決めがたかった、と。
その、ぼんやりしたモノは読後感にもあった。

あとがきで言うように、戦前の国策と吉田松陰の思想が重なり、どうも好感できないと。
そのぶん、高杉晋作への気持ちの傾斜はあったのではないか。
私自身も、元祖革命の巴里で贅沢に読みながら、高杉晋作に傾斜していた。

しかし、狂気に思想がアリ、第一段階。
そこに、狂気の行動がアリ、第二段階。
そこへ、実直な事務作業がアリ、第三段階。
三世代を経て革命が成功し、新政府が出来上がる、維レ新タナリ、維新。
楽しい日本史のお勉強でした。




ファイト!(101)  コメント(3)  トラックバック(0) 

ファイト! 101

コメント 3

isoshijimi

十数年ぶりに古典の授業を思い出しました。
理系のくせにセンター、国語がもっともよかった人間です。(こちらも十数年前の話・・・えせ理系・・・)
by isoshijimi (2015-01-24 15:26) 

hatumi30331

学生時代は古典が得意でした。
今や・・・・とほほ・・・^^;


by hatumi30331 (2015-01-24 15:50) 

あるいる

革命は一朝一夕にはなしえないということでしょうか。
三世代をかけて変えて行く揺るがない信念と教育が欠かせないということなんでしょうか。
短気な僕にはむつかしいと思いつつ、三世代も生きてはいないと一安心しながら、俯瞰で歴史を見るのが苦手な僕だと再確認です。
日本語文法、なかでも未然連用終止連体活用形は超苦手でした。
文法わからんでも日本語話せるモン。
生意気でアホな中学生でした。

by あるいる (2015-01-24 16:24) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0