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2021年1月14日 木曜日のこと


走り高跳びでベリーロールという跳躍方法がある。
私は高校時代、背面跳びで身長ほどの高さを跳んだ。
これは走るのが速かったと言うのと同じくらい、無意味な話である。

先日、拙宅のバルコニーにある1m40のフェンスを跳んだ。
バルコニーの広さは30畳ほどあり、助走も可能だった。
ただ、高齢者と呼ばれるオヤジのベリーロールは、無惨なものだったと思う。




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ちょうど株式の前場が終わり、半導体関連株のチェックをしている時だった。
フェンスの向こう側をゆらゆら揺れながら、義母様が移動していく。
毎日のトイレにもぎこちなく歩く人が、滑るように進む姿に違和感があった。

ろくに歩けない人がフェンスの外側を、動く歩道のように移動する。
歩いているとは思えないスピードで、飛び降りる!、、と直感した。
書斎から飛び出し、全力で駆けてフェンスを跳んだ、、、つもり。

義母様が、足から飛び降りようとする寸前、腕をつかんだ、と思う。
気が付いた時は私も倒れ込み、義母様をつかんでいた。
しなせて、ころして、江戸川に投げ込んで、と言う。




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何が起きているのか分からなかったが、血がボタボタ落ちていた。
義母様を傷つけたかと思ったら、私の血であった。
しばらくの後、左ひざ、左手、指、右ひじに痛みが生まれた。

義母様の頭の下に右足を入れ、まくら代わりにした。
ころして、寒いと呻く応酬に、私のもふもふの上着をかけてやった。
半袖になる身には寒いのだが、義母様をさすりながら、呆然としていた。




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レントゲンでは骨の異常はなかったが、全身打撲だった。
痛くて立ち上がれなかったし、義母様を抱え上げることもできない。
妻の帰宅を待つのは、実に寂しかった。

バルコニーのへりに腰を掛けて、フェンスの外側から景色を眺めていた。
和室の窓が開いていて、そこからバルコニーに出たのだろう。
しかしこのフェンスを乗り越えるとは、到底、考えられない。

妻は火事場の馬鹿力と言う。
日々のヨタヨタ歩きは何だったのだろうか。
未だに私はびっこをひきながら、手、足、肩の痛みに耐えている。




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さて、望み通りの結果を義母様が手に入れていたら。
対応が1秒遅れていたら、彼女は飛び降り、私は心に傷を負っていた。
彼女の企みを阻止する親不孝者だが、自分の心に負い目を持たずに済んだ。

1週間の痛み止めを頼りに、しにたいの念仏に付き合おう。
バルコニーで義母様に般若心経を上げたけど、効き目はなかった。
彼女には、しにたいという幻のような信念しかなかった。

パーキンソン病とアルツハイマーと87歳という年齢は、今後、何を起こすのか。
老いては子に従えと教えた人たちが、ベリーロールを高齢者にさせる。
今の私はガタガタだから、次の行動に出られても、ベリーロールは跳べない。

といっても通じないし、暫く見張り役と通報しかできることはない私。
相手は病気だから仕方がないし、恨みもせず、ただ、困っているだけだ。
今の救いは、経験者の個別体験を読ませてもらう、それが唯一の助けかな。




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