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「思い出のバラ」   [むかし噺]




片思いはいつでも一方的なもの。
それが明確に「気持ち悪い」と指摘されるようになった。
そしてストーカーと呼ばれるようになった。




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かつて片思いは、悶々とするものだった。
思いが叶わぬ心の痛み、思い起こせばあざだらけ。
どれだけ世の花から花びらをむしり取ったことか。




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13歳の時のそれが恋だと知ったのは4年後。
『小さな恋のメロディー』を見てからであった。
角のパン屋の前にある赤電話で2時間も話す休日。

当時は、市内なら10円で何時間も電話を掛けられた。
携帯電話のない時代、抑圧される反動は心をけしかける。
スタンダールの『恋愛論』に言う結晶作用と知るのは5年後。




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「もしも君がある目的地に向かって歩みだしながら、途中、足を止め、自分に吠えかかる犬の1匹1匹に石を投げつけていたら、とても目的地には辿りつけない。」 (『作家の日記』 ドストエフスキー)


恋多き少年は単に「愛情乞食」だったのかもしれない。
目的地にたどり着くこともできず、破滅することもなかった。
そしてたくさんの、切なさの記憶は残してきた。




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僕はいま妻のストーカー。
妻、三姉妹という目的地に辿り着いている。
じゅうぶんに幸せなくせ、薔薇に魅了されている。



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