とろける常陸牛 [味]
昭和20年3月21日 陽光うららかな日
「美しく立派に散るぞ」 そう言って一番機に向かう友の胸に
俺はまだ蕾だった桜の一枝を飾って送った 明日は俺の番だ
鶴田浩二が歌っていたが、歌うと言うよりセリフをずっと語っていた。
著作権の関係で日記形式のセリフ朗読の「同期の桜」だそうだ。
私にはこの心情と桜の花がいつも重なって見えたものである。
次女に誘われてお花見に行った。
行ってみて分かったことは、お花見という悠長なものではなかった。
まるで本当に、明日はオレの番だ、という覚悟が必要だった。
次女の知り合いが店を出していて、そこへ行き、食べ飲みが目的かな。
いわゆる縁日専門職とは違う、アンテナショップめいた集団だった。
常陸牛の網焼きは口の中で溶け、つい、お代わりを食べまくり、飲んだ。
新年度、ちょっとそのお腹どうにかしてよ、明日はオレの番だ。
娘が飲みながら食べながら、言う。
平和だねぇ、この人出、この光景、と。
あれだけ靖国参拝の文句ばかり言うC国の方が大型バスで投入される。
もちろんK国の方々も来て、騒いで、写しまくっていた。
なんだかなぁー、と思いながら、明日はオレの番だ、とつぶやくのである。
出発は遂に訪れず、殺気立った人混みは、苦手だと知る。
4月下旬、寒いなぁと言いながらジンギスカンで花見の北海道が平和なのだった。
殺気立って歩く集団の中を、なかなか花見気分にはなれなかった。
とろけてしまう常陸牛を娘にゴチになった。
ビールがちょうどよい陽光うららかな日、娘と平和を堪能した。
本当は、誰もいない場所で花見ができるといいんだけどな。
ファイト!