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『寂しい国の殺人』   [村上龍]






アスファルトで肉球を火傷する犬が増えているらしい。
夏の炎天下、道路の温度は60℃を超えるらしい。
都会では犬もイノチガケ。

ここ連日、危険な暑さと言い、連日死者が出ている。
室内ではためらわず冷房を使用してください、とニュースが言う。
冷房をケチって死ぬのはカッコ悪いので、毎日つけっぱなしで寝る。




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「14歳」に向かって村上龍が提案している。
 「三日三晩、徹夜でやり続けても飽き!ない何かを手に入れる事」
考えてみると妻が、子どもたちの小さいころから言い続けてきたことだ。




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W杯が終わり、自身の活字離れが改善されつつあるようだ。
本箱に生き残っていた村上龍を手にし、読んだ。
裏ページには2004年10月15日読了とメモがあり、14年前に読んでいた。





『寂しい国の殺人』 村上龍/シングルカット社(1998年1月20日 初版第1刷発行)
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p14
 「人間が壊れ始めているなどと、小説家にあるまじきことをさっき書いてしまった、上官の命により日本の兵士が外国人の首を日本刀で切り落としてそれが褒められていたのはたかだか数十年前のことだ、もともと人間は壊れているものです、それを有史以来さまざまなもので覆い隠し、繕ってきた、その代表は家族と法律だ、理念や芸術や宗教などというものもある、それらが機能していない、何が十四歳の少年を殺人に向かわせたかではなく、彼の実行を阻止できなかったのは何か、ということだと思う」


p16
 音楽家からは次のような返事が来た。
 「理念や法律や家族や宗教や芸術という制度を、ここまで麻痺させた国として、今の日本は世界的にも非常にユニークだと思います、そんな国は多分他にはないよ、アメリカにだってジャスティスという原則があるからね」


p44
 少年の逮捕から一か月が経とうとしているが、メディアの論調は「FOCUS」の顔写真掲載の影響もあって、少年法を巡るものに変わってきた。これから少年法を改正して、少年を死刑にすれば、こういう事件の続発を防げると本気で考えている「識者」がいるとは思えないが、学校でのいじめも家庭内暴力も不登校も減少している様子はないし、みんなうんざりしているようで、排除と制裁で対処しようという動きはこれからも強まるだろうと思う。


p46
 何か強烈な事件を契機にして思考を停止する人はいつの時代にもいる。ヒステリックに排除と制裁を叫んでいる人々は、この十四歳が恐いのだと思う。この十四歳が露わにしてきたことが理解を超えていて、それが恐いのだろう。近代化の途上という「のどかで貧しい時代」を生きてきた人々の想像力には限界があるし、彼らは近代化の労苦を背負った人たちでもあるので、わたしは「排除・制裁派」を批判しない。彼らはその労苦が報われなかったという挫折感によって「世間」と同化してしまった。この国の「世間」は原則よりも、ときには法律よりも強い。わたしはそういう「世間」とはできるだけ関りを持ちたくない。






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1997年(平成9年) に兵庫県神戸市須磨区で発生した当時14歳の中学生による連続殺傷事件に端を発して、村上龍が「新しい価値観」を考察する作品。書かれてから20年たつが、今も新しい。言い方を変えると、今もマスコミは間違った切り口で、井戸端会議を続けていることになる。


暑さ爆発の中で、風邪気味の妻を応援する。
よし、今夜は串カツでも食って、元気出そうや。




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