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『どこにでもある場所と どこにもいないわたし』   [村上龍]





想像力を欠くすべての人は現実へと逃避する
                (映画 『さらば、愛の言葉よ』/ゴダール監督 2014年 より)




『どこにでもある場所と どこにもいないわたし』 村上龍/文藝春秋
                                   (2003年4月25日 第一刷発行)
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      最近の龍さんは怒っているのだと、『オールド・テロリスト』を読んで思った。
      今回の作品では、十数年前の村上龍は、イライラしていたんだと思った。
      諦めながらも、イライラして、そして怒っている。
      やはり時代を読み解いている作家だな、と思う。




p185-186(『場所:自分』 あとがき)
「この国には何でもある。本当にいろいろなものがあります。だが、希望だけがない」
 そういう台詞を中学生が言う長編小説を書いてから、希望について考えることが多くなった。社会の絶望や退廃を描くことは、今や非常に簡単だ。ありとあらゆる場所に、絶望と退廃があふれかえっている。強力に近代化が推し進められていたころは、そのネガティブな側面を描くことが文学の使命だった。近代化の陰で差別される人や、取り残される人、押しつぶされる人、近代化を拒否する人などを日本近代文学は描いてきた。近代化が終焉して久しい現代に、そんな手法とテーマの小説はもう必要ではない。
 この短編集には、それぞれの登場人物固有の希望を書き込みたかった。社会的な希望ではない。他人と共有することのできない個別の希望だ。






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     昨日も「世間」から離れて、世俗の接点であるニュースに距離を置いた。
     「考えないということが、思考に悪影響を及ぼすかどうか分からないが」
     と、まるでゴダールの映画の言葉みたいに気取っている。




     『時を超えたアスリート対決』という「BS世界のドキュメント」を見た。

     五輪種目の過去の偉大な選手の記録と競う、という趣向である。
     陸上100m、女子競輪3000m、水泳200m自由形、女子やり投げ、カヌー500m。
     当時のシューズ、トラック、自転車、水着、プール、やり、カヌー、オールを使う。
オリンピックで次々と更新される世界新記録。しかし、人間の身体能力は本当に進化したのか? 現代のトップ・アスリートが往年の名選手と同じ条件で競技に挑み、記録を競う。◆ベルリン五輪でジェシー・オーエンスが出した100m走10.3秒の記録に挑むのは、10秒を切る自己ベスト記録を持つ北京五輪のメダリスト。オーエンスの時代と同じ重くて固い靴を履き、ゴムではなく、砂混じりのトラックを走る。このほか自転車競技、水泳、やり投げなどで、過去の名選手と現代アスリートのバーチャル・ガチンコ対決が行われる。進化したのは人間の肉体か? はたまたシューズやウエアなどの装備なのか。

     協力したアスリートにはご苦労さん、楽しかったでしょ。
     水泳家族にとっては、マーク・スピッツは偉大だったんだと理解した。
     科学だけではなく、練習環境、指導法、技術と、進化しているのだと理解。

     ただ、女子やり投げの、破られない世界記録を出した人は「男?」と思った。
     近年では、やり投げの槍が飛びすぎるので、重心を前に寄せたものに改められた。
     よって、過去の記録は破られなくなったようだ。

     国家ぐるみ、組織ぐるみのドーピングとは違った、面白い番組を見て満足した。


     今日も、「チョイワル生活」である。
     何も考えないで、チョイワルをして生きる3日目・最終日。


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コメント 2

hatumi30331

村上龍、昔は読みまくってた好きな作家。
彼は、時代に敏感、社会を見据えてる所あるよね。

今日も暑い!
セミがウルサい!^^;
by hatumi30331 (2016-07-29 07:35) 

あるいる

「どこにでもある場所と どこにもいない私」はまだ読んでいませんでした。
「さらば、愛の言葉よ」は少しだけ興味を惹かれましたがなんとなく見逃しました。
本は本屋さんで買ったり図書館で借りて読むことができますが、映画は上映期間中でないと映画館で観ることができません。
最近ではDVDやブルーレイ化されているものは買うことができますが、映画館で観るのとはまた違った鑑賞になってしまいそうです。
本も映画もどちらも大好きなのですが、この違いは大きな違いでときどき困ることになります。
もしかしたら、観ることができないのかもしれないのですから。
「時を超えたアスリート対決」は知らなかったものですから見なかった作品なのですが、映像でしか表現できない作品だと想像空想です。
早く泳げる水着が使用禁止になったことがありましたね。
ボブスレーのソリや棒高跳びの棒やヨットや体操の器具が技術革新でどんどん進化しているのに、なぜ水着がだめなのかがよくわからない僕ですよ。
よくわからないから考えるのですが、下手な考え休みに似たり、です。
勉強不足のせいもあるのかもしれませんが、やはりチョイワルではなく大馬鹿者の僕のようです。
ちょっと気になるのがチョイワルの内容と結果ですが、これは考えても想像空想妄想してもまったくわかりませんから、思考停止にいたしました。
これで、よし、です。

by あるいる (2016-07-29 16:20) 

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