『About Time』 [映画]
父がオレに言いたかったこと・・・、あっただろうな、と思うことがある。
病院のベッドで一人淋しく、苦しく、終わる姿を想像する。彼は何を言っただろうか。
良い映画を見ながら、ふと、そんなことを考えた。
特別なことなど必要はなくて、普通のおだやかな時間。
主人公が父親と卓球をしながら、これが最後だと言うときに、浜辺の散歩を選ぶ。
これは良いなと思う。ふたりの最後の時間が、ただの、浜辺の散歩というのが良かった。
『About Time』 (『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』)
2013年のイギリス、アメリカ合衆国合作によるSF恋愛映画。 過去にタイムトラベルができる主人公が、自分と家族の人生をよりよいものにしようとする。
「SF恋愛映画」というジャンルは奇妙な決めつけのように思う。しかしそういうジャンルの問題ではなく、爽やかな佳作だった。例によってWOWOWの「W座」だったが、好きな映画だ。こうして日本語ポスターを見てると、『ラブ・アクチュアリー』監督最新作、とある。なるほどと思った。英語版では『ノッティングヒルの恋人』や『フォー・ウェディング』の脚本と書かれており、そりゃぁもう、爽やかだ。
長女がホームステイしていたホストファミリーは、きっとこの作品を好んでくれるだろう、と勝手に思う。作品作りの細部へのこだわりが温かくて良い。
なにげない平凡な一日が大切な一日に変わり、当たり前のように身近にいた人たちに感謝をしてまた大好きになる……。そんな世代を超えた普遍的なメッセージは、世界中で感動の嵐を巻き起こし、本国イギリスでは初登場一位を記録。
忙しい日日の視点を変えて、例えばコンビニでレジ係の、決まり切った営業挨拶も、聞き流すのではなく相手の目を見て、しっかりと聞き届け、笑顔で去るだけで、大きく変わるものがある。生活の中の、些細なゆとりを持つだけで、大きく変わることがある。タイムマシンを使って「過去」を変えることよりも、生活の中で姿勢を少しだけ変えれば、そこに見えてくるものがある。
大教訓めいてはおらず、楽しく、わくわく、ハラハラしながら見終えることが出来た。久々に楽しい映画を見たぞ。もういちど見る可能性があると思い、DVDに落とした。
「平凡」 文 小山薫堂 (「W座」支配人)
つまらないのは つまらないと思うから
楽しいのは 楽しいと思うから
平凡をつまらないと思わず
平凡を楽しいと思えたなら
平凡は最高の宝物になる
ファイト!
2015-12-05 06:52
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コメント(7)
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おっと、一番海苔です
病室で亡くなる父が僕に言いたかった言葉は
頑張れ、ファイトだったでしょうね 目頭が熱く
なりますね(笑)
by kazu-kun2626 (2015-12-05 07:06)
>忙しい日日の視点を変えて、例えばコンビニでレジ係の、決まり切った営業挨拶も、聞き流すのではなく相手の目を見て、しっかりと聞き届け、笑顔で去るだけで、大きく変わるものがある。<
ズシンときました。
いま私に最も欠けているのはこれです!
by ロートレー (2015-12-05 08:02)
私も興味深く見たよ。
こんな能力があれば・・・
とか・・・・
最後に伝えたかったこと・・・
「平凡」の楽しみ方。
小山薫堂・・・・
いつも良い観点の良い言葉を残してくれるよね。
良い映画でした。^^
by hatumi30331 (2015-12-05 08:24)
私の父の最後の言葉(遺言)は
家にある6つの水槽で飼っている熱帯魚の餌やりの話でした。
それぞれの水槽の熱帯魚に
どの餌を、どう与えるかということをこと細かく母に伝えていました。
母は父の言葉を復唱し、それを紙切れに書き写しました。
私は、ほかにもっと大事なことを言えないものかと思い
イライラしながらその話を聞いていましたが
そのとき、父にとってもっとも大事なことは
自分が飼っていた熱帯魚のことだったんでしょうね。
今なら、なんとなくわかるような気がします。
by cafelamama (2015-12-05 09:40)
父が亡くなった日のことを思い出しました・・・。
by U3 (2015-12-05 14:25)
tommy88さんがこの種の作品を見られるの意外でしたが、佳作との評価、良かったです。特記事項のない平凡な1日に最高の幸せがあると思えるこの頃です。
by JUNKO (2015-12-05 19:43)
「About Time」、観たい映画リストにメモさせていただきました。
ありがとうございます。
疲れたとき、いろんなコトが煩わしいときになんとなく眺める映画があります。
ベルトラン・タヴェルニエ監督のフランス映画「田舎の日曜日」
リンゼイ・アンダースン監督のアメリカ映画「八月の鯨」
の2本です。
そしてときには小津安二郎監督の「東京物語」
これは2時間を超える作品ですから、ちょっとシンドイときがあります。
たいしたコトも起こらずに淡々と平凡な日常を描いた作品たちに、静かで平凡な日常も人生も人間もまだまだ捨てたものではないと、いつのまにか刺々しくなっている僕の心を鎮めてくれる映画たちですよ。
僕が小学校一年生の5月、突然の事故で亡くなった父ですが、本を読む習慣をさりげなく身につけさせてくれていましたよ。
近頃では父の顔も朧気になってきた親不孝者の僕です。
by あるいる (2015-12-06 04:07)