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『影の外に出る ~日本、アメリカ、戦後の分岐点』   [読書 本]




言いにくい話だが、ニュアンスだけで盛り上がるのは、子どもと変わりがない。「戦争反対」などと、当たり前のニュアンスではなく、「正論」が必要で、10年前の本は小泉政権時代の話ではあるが、参考になる。私たちは、ただ、何もしてこなかっただけなのである。


「アメリカからの光を日本が受けて影が出来る。その影が自分自身と思って日本はここまで来た。その影の外に出ることで、日本が自分をとらえなおす・・・」との思いで筆者は書名を紹介している。あの、ヤワに思えた片岡義男が、正論を吐いている。好きになった。





『影の外に出る ~日本、アメリカ、戦後の分岐点』 片岡義男/NHK出版
                      (2004(平成16)年 5月 30日 第1刷発行)
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p7
 考えることをどこかでやめると、考えを停止したことによってそこから先に発生するマイナスは、借金が雪だるま式に大きくなっていく、というようなことに例えることが出来る。思考を停止した人が最も陥りやすいのは、べきである、べきではないという、すでにその人の中で出来上がって固定されている価値観によって、すべてを性急に裁断してしまうことだ。その人の価値観はその人の財産であり、少しだけ大げさに言うなら、それはその人の既得権益のようなものだ。これを守ろうとして活用される、べきである、べきではない、という価値観は、持続させることがもはや不可能なほどに効用のつきた制度であり、現在という現実に対して、これほど無力なものはない。


p72
 テロ攻撃の標的は無制限と言っていい広がりを見せ始めている。そのイラクにアメリカは三千人規模で海兵隊を派遣するという。あくまでも軍事的に、しかも徹底的にやるという態度以外の、なにものでもない。状況は劇的に悪化するだろう。

 こういう現実がイラクにはあるのに、記者会見で官房長官は、だからと言って「自衛隊がイラクへ行ってはいけない、ということにはならない」と発言した。こう言っている当人の顔の先せいぜい30㎝ほどの範囲でしか通用しない理屈に重ねて、「引き続き調査・情報収集をしなければならない」とも言う。どのような情報を誰がどのように収集し、それはいったい誰にとってどのように役に立つものなのか。


p76
 国際社会、という気楽なひと言
 日本よ自分の軍隊をイラクへ出せ、と「国際社会」から日本が言われたことは一度もない。


p77
 「安全には配慮する」としか言えないうちは、軍隊を動かそうなどとは思わないほうがいい。
 戦場へと赴こうとする自国の軍隊に向けて、「安全には配慮する」などという国家を、僕は聞いたことがない。さらに二、三ヶ月さかのぼれば、「(戦場の)どこが安全でどこが危険かなんて、私に訊かれたってわかりませんよ」などとも言ったのだから、国家として体をなしていない。したがって軍隊に関しては自制すべきだ。


p206
 戦後の日本が外交と防衛の問題をさぼってきたのは、アメリカの傘下にいたからだ。さぼってきた当然の結果として、世界という現実を正しく認識する力と、そのために必要な正確で深い知識や豊富な体験を、批判する側もされる側も、等しく欠いている。これが戦後日本の成果なのだ。選択肢が一つしかないというあり方は、無能国家や失敗国家が持つ最大の特徴ではないか。身近にお手本のある独裁という無能や失敗は、たいそうわかりやすいだろう。

 どこまでもアメリカについていくと日本は孤立すると言うけれど、日本はとっくに孤立している。アジアとのつきあいを半世紀を越えて日本はさぼってきた、としか言いようがない。その結果、アジアのどこにも日本は友人を持っていない。アジア全域の安定や繁栄の核の一つとして、将来に向けて長く有効に機能するさまざまな関係というものを、どこの国とも作っていない。


p209-210
 日本にとって戦後とは、冷戦が続いていた期間だったようだ。冷戦が終わったあとは次の段階に入ったのだが、日本は気づかないままここまで来た。戦後ずっと、日本はアメリカの傘下にいた。いまもそこにいる。そしてその傘下で、日本は外交と軍事をさぼった。どちらも国の根幹にかかわることだが、戦後の日本にとって国の根幹とは、自動車産業の成長や家電のシェア合戦だった。そして国について考えたり語ったりすることは、タブーにまでなった。

 なにしろさぼりにさぼった。外交と軍事をほとんどやらないで来た。だからいまにいたっても、それらについて日本は基本から知らない。知らないから、したがって出来ない。出来ないからますますやらない。やらずにすませることの、言い訳の術だけはうまくなったのだろうか。やっかいなこと、特に対外的なそれを、可能な限り考えたくない。したくないというのが、戦後日本の国家方針だった。こういう期間が五十何年も続いたのだから、日本が外のことを知らないのは当然だ。知らないから国際情勢などつかめっこない。しかもその情勢は急速にそして複雑に、変化の層を重ねていく。何をどうしていいかわからない状態を、アメリカへのさらなる依存へと転換する。日米同盟の重視、つまりアメリカからの要求に応え続ける日本を推し進めることを通して、世界全体を自らの手でさらにわからなくしてしまう。

 半世紀を越えたこの過程のなかで、国家観や国家像というものを日本は失った。国はあるのだが、その国はどのような国なのか、長期的な将来のなかでどんな国になりたいのか、世界の中にどのような機能を担ってどんな位置を占めたいのかといったことに関して、主体的に考える能力を喪失した。日本という国の顔が見えない、日本は他国と口をきかない、日本は他国と真のつきあいをしない、日本には他国に提示できるヴィジョンがない、という外からの批判を受け止めた日本は、自らが自らに向けて同じ批判をおこなった。国家や国家像をすでに失った事実から発生してくる、これは実にわかりやすい症状だった。

 ヴィジョンとは、国家観がしっかりとあった上で、将来に向けた長期的な戦略のなかに、国益と深くからんで、自画像のように浮かび上がってくるものではないか。国家観などなくてもいっさい不足を感じることもなく、いっこうに平気だったのは、会社が拠り所としてほぼ絶対だったからだ。勤めている会社の中にすべてがあった。冷戦が終わるまではそれで充分だった。冷戦が終わるのと時期をほぼ同じくして、日本では会社が絶対ではなくなり、会社を軸にして組み立てられていた社会システムのあらゆる部分が崩れ始めたのは、興味深いところだ。




民主党は総会屋のような女を使って自滅した

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政教分離の出来ていない公明党が、創価学会の圧力を跳ね返して賛成に回った。賛成する「益」が大きいからであろう。対案を出せなかった民主党は、議場に臨むまでプラカード作製が全ての「準備」だったというお粗末。「強行採決をされた」というニュアンスを演出するだけだった。多くの民主党議員も本音は、「賛成」だったのだ。いちど政権を担当し、「外交」に関わった経験があるから当然である。

アジアの中ではトップクラスの軍事力を持つ自衛隊を、「軍隊ではない」と言い続ける不思議。抑止力であった憲法から離脱するなら、憲法を改正し、堂々と自立すべきであると言う意見を、誰も言わない。正攻法を取らなかったツケは、なし崩しの場面に移っていく。「戦争反対」どころではない領域へと進むことになった。プラカードの後ろに隠れていた民主党議員の罪は重い。創価学会の「正論」が奇跡的に正しいのだが。



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小雨で鬱屈としてしまう我が感性の脆弱性が気になってしまう。
カラスの横暴に専守防衛、雨が上がっても傘をさして歩くのである。
鬱勃たる闘志を抑えて専守防衛、我が身をカラスから守る情けない姿のオヤジ。


昨日の歩きは、15298歩。



今日は友だちの来るワインの日、ファイト!





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コメント 4

hatumi30331

片岡義男・・・数年前に何冊か読んだことあるよ。
こういう話しも書くんやね。

しかし暑い!
今日は赤ワインでストレス発散ですね!
お友達との時間・・・有意義にお過ごし下さい。

私は祭りに!(笑)
by hatumi30331 (2015-07-20 08:27) 

あるいる

G8やサミットやいろいろな各国首脳が一堂に会する国際会議で、日本のトップたちは対等に議論が出来ているのだろうかと、ドイツやイギリスやフランスのトップたちが英語での会話を繰り広げている中、なんだかわからない薄笑いを浮かべた日本人が隣に立っているのを不思議に眺めてしまいます。
(日銀の黒田総裁は対等に話しているようです)
経済大国になれても政治大国や文化大国にはほど遠い日本、語学力だけがすべてではありませんが、必要不可欠な素養だなとつくづく思える場面です。
少なくとも英語でやりとりされる情報をそのままのかたちで理解できる能力が必要不可欠な世界になっているのだと思い知らされる場面です。
日本人でさえ理解できない政治家の日本語&政治家用語。
翻訳というフィルターを通さず直接にやりとりできるコミュニュケーション能力と理論武装が求められているのだろうと思えますよ。
と、横文字苦手な僕が言えた立場ではありませんけれどね。

by あるいる (2015-07-20 15:21) 

isoshijimi

昨日は抑え気味の歩数でしたね。
本日はもう今頃赤ワインを楽しまれているのでしょうか!?
素晴らしく大事なお時間を過ごしてください!
by isoshijimi (2015-07-20 17:09) 

JUNKO

私も何冊か読みました。赤ワインの味も格別でしょう。
by JUNKO (2015-07-20 20:19) 

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